30石のデマントイトガーネット
「デマントイドガーネット」は私たちディーラーにも憧れの宝石です。
アンティークジュエリーでもデマントイドガーネットが用いられた作品は、滅多に出会うことができません。
デマントイドガーネットは19世紀後期、ロシアのウラル山脈で採掘された宝石です。
パリ、ロンドン、セントペテルブルグなどのハイクラスのジュエリーに用いられ世界を虜にしますが、実際に残された作品は少ないです。
フランスのアンティークジュエリーで使われたケースはとても少なく、イギリスまたはロシア(ファベルジェが好んだ宝石です)の作品で僅かに見つかりますが、絶対的に数の少ない宝石です。
金色の輝きを帯びたデマントイドガーネット。
トルマリンともペリドットとも明らかいメイドの異なるグリーンのその憧れの宝石は、仮に小さな石一つでも私たちの胸を躍らせる、貴重な宝石です。
それが今回、なんと小さいペンダントに30石もセットされているのですから、見つけた時の喜びは格別でした。
実は譲って下さったイギリスのベテラン女性ディーラーさんも、このペンダントを見た瞬間絶対に扱いたいと思って仕入れたそうです。
長年この業界で働くディーラーたちにとっても、やはり格別の宝石なのです。
これだけの数のデマントイドガーネットがセットされていながら、すべての宝石がオリジナルなのも奇跡的です。
ハートのロケットペンダントは裏面が開きます
デマントイドガーネットにとにかく注目が集まる作品ですが、中心のダイヤモンドもさりげなく大粒でデマントイドガーネットに負けない素晴らしい透明感のある石が用いられています。
ダイヤモンドはオールドヨーロピアンカットであることが分かりやすい例で、キューレットがかなり大胆にカットされていますので、正面から見たときに穴が開いたように見えるのが特徴です。
全体は愛らしいハートシェイプ。
ロケットになっていて、裏面を開けることができます。
ミノのような先のとがったものを使って開けることができますので、日常的に開け閉めするというよりは写真等を入れてある程度長い間、そのまま使うといった用途のロケットです。
裏面はガラスですので、入れたものを裏側から眺めることもできます。
裏面の台座の窓から、デマントイドガーネットの色が見えるところも良いです。
ロケットのガラスもオリジナルでかなりしっかり厚みがあり堅牢です。
こうした小さな宝石が散りばめられたペンダントはどこか修理の跡や加工の跡などがあることも多いのですが、このペンダントはバチカン部分に至るまでオリジナルです。
バチカン部分にもダイヤモンドが入れられていて、この脇石のダイヤモンドさえ驚くほど厚みのあるオールドヨーロピアンカットのダイヤモンドが用いられています。
このペンダントがいかにハイクラスのジュエリーとして作られたものであるかが分かります。
1900年頃のイギリス製。
地金はイエローゴールド(15-18カラットゴールド)。
注:チェーンは付いていません。
小さな写真をクリックすると大きな写真が切り替わります。
ガーネットと言えば赤色のイメージが強いと思いますが、緑色のガーネットも存在し、アンティークジュエリーでは特にデマントイドガーネットが特別な存在です。
グリーンガーネットは、聖書にも記載のある最も古い宝石の一つです。
「燃える石炭」とも呼ばれ聖書の中ではノアの箱舟の道しるべの明かりとして使われたグリーンガーネット。
強力な守護の力を持つと信じられ、魔除けとして使われたり、医薬的効能を持っていると信じられてきました。
グリーンガーネットには主に2種類あります。
翡翠と良く似た「グロッシュラーガーネット」と、ガーネットコレクターの垂涎の「デマンドガーネット」です。
グロッシュラーガーネット
グロッシュラーガーネットはガーネットの種類の1つで、「グロッシュラーガーネット」と言っても様々な色が存在します。
オレンジ系、イエロー系、ゴールド系。
そのカラーバリエーションの一つが、緑色のグロッシュラーガーネットです。
下記はグリーングロッシュラーガーネットの指輪です。
グリーンのグロッシュラーガーネットの内、特に深い透明なグリーンの石を、特別に
「ツァボライトガーネット」と呼ぶことがあります。
これは鉱物名ではなく商業名で、命名したのはティファニー社です。
「ツァボライト」の産地は、アフリカのケニア・タンザニア国境地帯。
ツァボライトが発見されたのは、デマントイドガーネットが発見された100年ほど後になり、アンティークジュエリーではまずあまり見られない宝石です。
デマントイドガーネット
アンティークジュエリーファンにとって垂涎なのがデマントイドガーネットで、ご存知のない方はいらっしゃらないのではないでしょうか?
当店でもよくリクエストを頂く宝石ですが、実際の市場ではほとんど見かけることがない非常に貴重な宝石です。
なぜかと言えばデマントイドガーネットは、帝政時代のロシア・ウラル地方のみで採掘された宝石だからです。
発見されたのは19世紀で、その採掘はロマノフ王朝が革命で倒れるまで続きます。
デマントイドガーネットに神秘的な魔力があるのは、この宝石がロシアのアンティークジュエリーと深く結びついた宝石だからでしょう。
ロシア皇帝アレクサンドル3世は、かのカール・ファベルジェにデマントイドガーネットを用いた宝飾品を多く作らせています。
アンティークジュエリーで見られる緑色の宝石は、エメラルド、トルマリン、ペリドット、デマントイドガーネット。
デマントイドガーネットは、この中で比較的ペリドットの色に一番近いですが、その違いは鮮やかな明るいイエロイッシュ・グリーンです。
イギリスのアンティークジュエリーでもデマントイドガーネットは使われましたが、その数は非常に少ないです。
フランスのアンティークジュエリーではほとんど見たことがありません。
下記はイギリス製。
宝飾界の宝物であったデマントイドガーネットは、イギリスのアンティークジュエリーで見かけても小さな石が部分的に使われるに留まることが多いです。
下記もイギリス製で、真ん中の緑石がデマンドガーネットです。
下記もイギリス製ですが、このように全ての石がデマントイドガーネットであるのは、極めて希少な例です。
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