筆記用具にもなるアンティークジュエリー
美しく縦長のペンダント。
蓋を開けてびっくり!
何と鉛筆を入れることができるようになっています。
鉛筆は旧式の平たいタイプの今でいうところの「スケッチペンシル」が収まる形です。
一見ペンダントにしか見えないのに実はステーショナリーでもある、嬉しいサプライズです。
モチーフは宿り木(ヤドリギ)。
アールヌーボーのジュエリーで重用されたモチーフで、日本でもとても人気のあるジュエリーモチーフです。
ペンダントの表と裏に、描かれた宿り木。
通常のジュエリーより長さがあるので、宿り木も勢いよく広範囲に描かれています。
地金はFIX
地金は金無垢に見えますが、「FIX」と呼ばれる昔フランスで重用されたのゴールドプレート(金メッキ)です。
FIXとは19世紀初頭にフランスのある工房が始めた圧延式のゴールドプレート(金メッキ)です。
通常の金メッキより厚みがあり、まさに金が塗られたような質感が特徴です。
見た感じは例えば同じ金メッキであるシルバーギルド(ヴェルメイユ)などに比べてもずっと金無垢に近い色合いです。
実はこのペンダントの場合珍しく「FIX」の刻印まで入っています。
FIXの刻印といいますか貴金属以外の刻印が入っていることは稀です。
注:チェーンは付いていません。
オリジナルかどうかははっきりしませんか、付属していた古いえんぴつは芯が折れてしまうほど摩耗しています。
えんぴつは実用には耐えられません(もちろんペンダントは堅牢です)。
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知られざるアールヌーボーの本質
しなやかな曲線と自然への感性。
日本でも人気の高いアールヌーヴォー様式ですが、その「本質」は意外に知られていません。
アールヌーヴォーは19世紀末(1900年前後)、あらゆる芸術領域を席捲した装飾様式です。
ジュエリーの世界でアールヌーボーは、「貴石をシンメトリーにセッティングした従来のジュエリー作り」から「宝石的価値ではなく色によって選別した石を、美しく彫金されたゴールドにニュアンスカラーのエナメルと共にセットしたジュエリー」への脱皮をもたしました。
アールヌーボーと言うと柔らかな曲線から「ロマンチックな自然主義」と言うイメージが強いことでしょう。
しかしその根底には世紀末ならではの「デカダンス」があります。
溢れんばかりに花をつけた枝や、豊かに広がりうねる長い髪といったアールヌーボーの典型的な図柄の裏には、「自然の残酷さや死」が念頭にありました。
アールヌーボーのジュエラーとパリ万博(1900)
ジュエリー界でもっとも早く「アールヌーボー」の言葉を使い出したのは、ルネ・ラリック(Rene Lalique)。
下記は1902年にイギリスで発行された「Magazine of Art」に掲載されたルネラリックのジュエリーデッサンです。
女性の顔と睡蓮が描かれたペンダントのデッサンですが、この頃はまだルネラリックはロンドンでは広くは知られていませんでした。
1900年のパリ万博では、ルネ・ラリック、メゾン・ヴェヴェール(Maison Vever/ヴェヴェール工房)、ルシアン・ガリヤール(Lucien Gaillard)の3人がジュエリー部門でグランプリを獲得します。
下記は1900年頃に製作された、ルシアン・ガリヤールの青い鳥の髪飾り。
鼈甲とプリカジュールエナメル、目の部分にダイヤモンドが入れられています。
アールヌーボーは東洋の美意識、特に日本の芸術に強い影響を受けましたが、この作品は私たち日本人が見ても、日本的な美しさを感じる作品ですね。
この万博では、ジョルジュ・フーケ(Georges Fouquet)とウジェーヌ・フィアートル(Eugene Feuillatre)が金賞を受賞しました。
ジョルジュ・フーケは1898年にランの花をモチーフにしたジュエリーでアールヌーボーの作品を初めて手がけます。
そしてポスターアーティストのアルフォンス・ミュシャと一緒に、いくつものプレートをチェーンでつなげたジュエリーを発表します。
下記は1900年にアルフォンス・ミュシャがデザインした、宝石商ジョルジュ・フーケの店舗です。
ステンドグラスやモザイクタイルの装飾等、ミュシャがポスターの中で描いたアールヌーボーのテーマや曲線が再現されています。
今日、このインテリアショップの内装は、パリのカーナヴァル美術館で見ることが出来ます。
また同年代のジュエラーの中でルネラリックと並び賞賛を浴びていたのが、ベルギーのジュエラーであるフィリップ・ウォルファー(Philippe Wolfers)です。
アールヌーボージュエリーに関して更に詳しい情報は、アールヌーボー(アールヌーヴォー)のアンティークジュエリーの特徴と魅力をご参照ください。
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