2本セットのべっ甲製の髪飾り(ヘアオーナメント)
象牙と同様ワシントン条約により今では新しい製品が作り出されることのないべっ甲(べっこう)製品。
べっ甲は熱によってしなるその性質から、古くはローマ時代から宝飾品の製造に重用されてきた素材の一つです。
透明感あるべっ甲色の、この髪飾りは1900年頃のフランス製です。
何と2つの髪飾りが入っています。
西洋で作られたものですが、どことなく和風の趣もあります。
着物着用時のかんざしとしてお使いいただくのにぴったりです。
それぞれのかんざしの付け根の部分には、メタルをねじったてU字型の飾りが施されています。
その上に3つの小粒ながら美しい天然真珠がセットされています。
年代的に考えてもジャポニズムが席捲していた時代。
オリジナルのケースがなければ日本のものとも錯覚しそうな、当時のフランスの職人が作り上げた「和の粋」が感じられる作品です。
オリジナルケース付き
オリジナルのケースがそのまま残っているところも素晴らしいです。
内側の蓋上部に「H Dumont 4 Chausse d'antin Paris 」と描かれています。
「H Dumont」が宝飾店の名前になります。
調べてみたところ「Henri Dumont 」の略称であることが分かりました。
1863年に生まれたフランスのジュエラーの名前で、ジュエリーの他に、金銀細工も手掛けていタコとが分かり、このような宝飾品を生み出したことに納得です。
「4 Chausse d'antin Paris」はこの宝飾店があった住所になります。
ここまで確認が取れることは珍しいので、そうした意味でも貴重です。
またオリジナルボックスの外側には「Alice」と言う名前が刻まれています。
元々「オーダーメイドの贈答品」として作られた髪飾りだったのでしょう。
「Alice」と言うのは女性の名前で、この方の名前が金色の字で彫られています。
時代を経て、当時を思い馳せることが出来るロマンチックな髪飾りです。
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ベッコウとはタイマイ(ウミガメの一種)の背と腹の甲を構成する最外層の角質からなる鱗板を剥がして得られる工芸品の素材です。
英語ではTortoise shell。
アンティークジュエリーではローマ時代から、珍重されてきた素材です。
日本でも古くから櫛、かんざし、帯留めにされましたが、西洋でもブレスレットやペンダントなどジュエリーの他、髪留めや扇の柄、小物類に使用されました。
熱を加えることで、形を変化させることの出来るべっ甲はジュエリーの素材として優れていたのです。
下記の19世紀の扇では、骨組みのところに白べっ甲」と呼ばれる透明なべっ甲を使用されています。
下記は当店で販売済みのべっこう製のアンティークシガレットケースです。
べっ甲のみで作られたケースは、珍しいです。
漢方薬などでもベッコウという言葉がでてきますが、これはタイマイではなくてスッポンの甲羅であり、違うものです。
日本人にとても馴染みの深い鼈甲ですが、原料であるタイマイはワシントン条約により1992年に既に輸入を禁じられています。
近く幻の素材となるひとつでしょう。
アンティークエピソード集のページでは、様々なアンティークに関するエピソードをご覧いただけます。
アンティークリング、アンティークネックレス、アンティークピアス、アンティークブレスレット等、希少なヨーロッパのアンティークジュエリーを随時100点以上揃えています。
シェルシュミディで取り扱うアンティークジュエリーは、全てオーナーが直接フランス、イギリスを主としたヨーロッパで買い付けてきたものです。