久しぶりの18世紀のダイヤモンドリングの入荷です
18世紀のジュエリーを見つけるのは言うまでもなくとても難しく、フランスやイギリスでお付き合いしているディーラーさんの中でも、18世紀のジュエリーを紹介してくださるディーラーさんは極一握りです。
彼らにとっても古い時代のジュエリーほど、流通量が少ないからです。
この指輪は長年親しくさせていただいているフランスのディーラーさんが私が訪れた数日前に手に入れたばかりのリングでした。
タイミングよく譲っていただけて、幸運です。
18世紀のジュエリーは傷みのあるものも多く、仮に傷みが相当あっても価値はありますが、こちらのリングはダイヤモンドの状態も良く完品と言える状態です。
ダイヤモンドが3石、横に一直線に並んでいます。
18世紀らしいゴツゴツしたカッティングのローズカットですが、古い時代のローズカットが破片のような薄さのものが多い中、厚みも驚くほどあります。
この時代のダイヤモンドですのでダイヤモンドの内部に多少の内包物はありますが、非常に透明感があるのも素晴らしいです。
クローズドセッティングされて裏面から光が入らないものの、透明感があるおかげで角度によって綺麗にキラリと煌きます。
触れることでも年月の深さを感じる、素晴らしいリングです
ダイヤモンドの周りは銀で、フレーム部分が18カラットゴールドになります。
「18世紀のジュエリーでゴールド?」とご質問を頂くこともありますが、このスタイルがこうした古い時代のダイヤモンドジュエリーの基本です。
通常ダイヤモンドの周りは「白い金属」でセッティングされ、この時代の白い金属は必然的に銀になりますが、それ以外の部分はハイカラットゴールドを用いるのが普通です。
古い時代のジュエリーを見分ける上で重要なのは触感。
特にダイヤモンドを留めている銀の部分は年月と共に良い感じで摩耗しているため、触ると気持ちの良い触感があります。
18世紀後半の作品で、18世紀後半から1800年に向けてフランスでは、フレームとショルダーが一体化した「線の指輪」と呼ばれる指輪デザインが流行します。
その一例です。
線のように細いことからそのように呼ばれている指輪ですが、フレームは堅牢でしっかりしています。
フレームの部分も年月を帯びて心地のよい丸みが気持ちよいです。
指輪サイズは14.5号。
サイズ直しは可能ですが、かなり古い時代の指輪ですので、特にサイズアップはあまり大きなお直しはしないほうが良さそうです。
ご相談ください。
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アンティークジュエリーの中でも現在市場に流通するアンティークジュエリーの多くは、19世紀後期以降のものです。
18世紀のジュエリーというのは、イギリスのアンティークジュエリーでもフランスのアンティークジュエリーであってもきわめて流通量が少ないもの。
どれくらい少ないかというと、現地のアンティークショップに行っても、ほとんどのお店にも一点もないのが普通です。
実際、当ショップでも18世紀のジュエリーは片手で数えられるぐらいしか扱っていません。
出てくることは稀で、高いお金を払おうが払うまいが、滅多に見つけられないのが18世紀ジュエリーなのです。
18世紀といえば1700-1799年。
フランスの18世紀ジュエリーはその大半がフランス革命(1789-1799)に入る前に作られていますから、まさに250年以上前に作られた歴史的遺産なのです。
ブルボン王家の最盛期から、フランス革命によって王政が滅びた激動のフランス18世紀。
歴史的に見てもとても面白い時代ですし、ご存知のとおり文化的に素晴らしく洗練されて成熟した文化が生まれて、そして壊された時代です。
18世紀と言えば後期バロック、ロココ様式です。
パステル調の色合いや、曲線を多用しているところが特徴的です。
下記は18世紀の「girandole」と呼ばれるデザインのピアス。
アメジストx紫でシルバーセッティングです。
そして18世紀と言えばマリー・アントワネットを思い浮かべる方も多いことでしょう。
この時代のフランスではルイ16世紀の妃であるマリーアントワネットというファッションリーダの下で、多くの秀でた宝飾品が作られます。
(そしてその多くがフランス革命によってフランス国外へ流出してしまったことも有名な話です)
この時代に作られた主たるジュエリーに、ボタンやバックル、ストマッカー、髪飾り、コサージュピン、ピアス、ネックレス等があります。
ロココ様式では彩り豊かなジュエリー、そして大きめの宝石をセットすることが好まれました。
18世紀にエメラルドやサファイヤ、ルビーなど色のついた宝石がそれ以前の時代に比べて多くジュエリーのセットされるようになります。
ダイヤモンドに関しては、世界の大きな鉱山の発見は19世紀後期以降ですから、18世紀はまだまだ絶対量がとても少なく、制限の多かった時代です。
18世紀アンティークジュエリーのダイヤモンドは、ローズカットにされることが多くそのローズカットは19世紀のローズカットよりずっと平坦です。
この時代のダイヤモンドは黒い内包物が見られることが多いですが、その絶対的な迫力と力強さは何にも変えがたいです。
「18世紀のジュエリー=地金は必ず銀」と思われている方が多いのですが、
18世紀の特にダイヤモンドジュエリーでは銀が用いられていることが多いですが、ゴールドのストマッカーなど例外もあります。
色石の周りもゴールドにされるのが標準的でした。
またダイヤモンドのジュエリーでも、18世紀の末に向かって裏面がゴールドバックにされることが増えていきます。
そしてこのようなゴールドは、既に18Kゴールドが実用されていたのです。
しかしここで注意していただきたいのは、存在していたのはイエローゴールドのみという点です。
18世紀はホワイとゴールドもプラチナも存在しませんでした。
また指輪は裏がクローズドになっています。
宝石以外では、色とりどりのペーストガラスや無色の鉛ガラスが当時の貴族たちに好まれ、ガラスとは思えないほど美しくセットされたジュエリーが見られます。
こうしたジュエリーはガラスとは言え、非常に高額に取引されていますし気高く美しいジュエリーです。
色石部分にペーストガラスが使われた18世紀のピアス。
エナメルも好まれた素材です。
18世紀末のブルーエナメルのお花がデザインされた指輪。
以上、フランス18世紀のジュエリーについてご紹介いたしましたが、この時代にイギリスはもちろん他国でもジュエリーは作られています。
特筆すべきはポルトガル及びスペインです。
下記は18世紀末ポルトガルのブルーエナメルとダイヤモンド、銀セッティングの指輪です。
スペインはこの時代にゴールドを支配していましたので、ゴールドを贅沢に使ったジュエリーが作られています。
こうした本物の18世紀のジュエリーは、数十年前ならともかく現在パリのアンティークショップを回っても見かけることがほとんどありません。
当店でもこれまで仕入れることのできた18世紀のジュエリーは大抵、懇意にしているディーラーの個人コレクションを売ってもらったものです。
今後、この時代のこうしたジュエリーはますます希少にご紹介しずらくなっていきそうです。
アンティークエピソード集のページでは、様々なアンティークに関するエピソードをご覧いただけます。
アンティークリング、アンティークネックレス、アンティークピアス、アンティークブレスレット等、希少なヨーロッパのアンティークジュエリーを随時100点以上揃えています。
シェルシュミディで取り扱うアンティークジュエリーは、全てオーナーが直接フランス、イギリスを主としたヨーロッパで買い付けてきたものです。