優美な薔薇の彫刻が施されたカーブドアイボリー
今回幸運に恵まれて、アンティークアイボリー(象牙)のネックレスをまとめて仕入れましたが、その中でもこのネックレスが、アンティークジュエリーとしては恐らく一番王道を行く作品です。
この作品だけ、象牙に細密な彫刻が施されているからです。
しかもモチーフは薔薇。
その繊細で美しい彫りはアンティークのカーブドアイボリーならではです。
硬度が宝石ほどないアイボリーにこのような彫刻を施すのは、宝飾師とはまた異なる技術が必要でした。
アイボリーは大陸ヨーロッパ(主にドイツ、フランス、スイス)で発達しますが、これらの国の中でもカーブドアイボリーの発展した地域は、アンティークジュエリーにおいて、彫金が発展した地域とは異なり自然に近い山間部で発展します。
そのせいかアンティークアイボリーのジュエリーは宝石や貴金属を用いたジュエリーにはない温かみ、牧歌的で精神的な充実を感じさせる作品が多いように思います。
後ろ部分も含め、すべてが象牙の珠で作られています
ネックレス全体はグラデーションになっていて、中心部の9つの珠にだけ彫刻が施されています。
残りの部分はプレーンの象牙の珠が連なっています。
いずれも状態が良いです。
チェーン部分の象牙の珠が小粒で細身なのもバランスが良いです。
留め具部分の地金は金属(ゴールドではなくメタルです)になります。
またこれは私が手に入れたときからそうなのですが、左右の両方が引き環ではなく留め具になっている変わった作りになっています。
もちろん実用に不都合はありません。
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象牙(ぞうげ)とはゾウの長大に発達した切歯のことです。
硬すぎず柔らかすぎず、古くからジュエリーや工芸品に愛用されてきた素材です。
西洋では無色のジュエリーが流行したこともあり、素晴らしいジュエリーの数々が作られました。
下記はイギリス、ヴィクトリア・アルバート美術館貯蔵。
カーブドアイボリーで描かれた風景のフレームが、18世紀のゴールド指輪のベゼルにセットされています。
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c Victoria and Albert Museum
象牙(アイボリー)は当時、インド、スリランカ、アフリカからヨーロッパに輸入されました。
先にご紹介したのはイギリスの作品ですが、カーブドアイボリー(象牙の彫刻)は特に大陸ヨーロッパで発展しました。
特に有名なのが南ドイツです。
エアバッハ (Erbach)の街には1781年に、カーブドアイボリーのための学校と工房が作られています。
それ以外ではスイスとフランスがアイボリーのジュエリーの製作の中心でした。
下記は当店で販売済みのカーブドアイボリーのネックレス(フランス製)。
象牙はジュエリー以外も古くから、多くの装飾品に用いられています。
下記はとても古い時代、18世紀の扇ですが骨組に象牙が使われています。
下記は数年前にササビーズロンドンの出展された象牙を用いた時計。
ベルエポック時代に活躍したリュシアン・ファリーズ(Lucien Falize)の作品です。
c 2016 Sotheby’s
1989年よりゾウの保護のために象牙の販売は、ワシントン条約によって制限されています。
しかし制限の対象になっているのはこれから作られるアイボリーであり、アンティークジュエリーのように過去に作られた象牙の加工製品は禁止対象ではありません。
しかしフランスでは実際に売買をするためには証明書を提出することが義務付けられており、それが非常に大変で更に費用もかかる作業だそうです。
象牙のアンティークジュエリーはもちろん貴重品ですが、それでもダイヤモンドなどに比べてそこまで1点ずつが高価なわけではないですから、業者としては割に合わない作業です。
それで一時的に(2016年現在)行き場のなくしたアンティークの象牙のアンティークジュエリーが出てきていて、比較的リーズナブルに数点のアイボリーのアンティークネックレスを仕入れることができました。
下記は何と152センチもある象牙のロングチェーンネックレスです。
下記は珍しいアイボリーの指輪。
しかしながらこれから象牙を用いたジュエリーは作ることができません。
アンティークの良質な象牙のジュエリーも少なくなってきています。
以上を踏まえますと長期的には確実にまたあがっていき、これまで以上に更に非常に品薄になるでしょう。
アンティークエピソード集のページでは、様々なアンティークに関するエピソードをご覧いただけます。
アンティークリング、アンティークネックレス、アンティークピアス、アンティークブレスレット等、希少なヨーロッパのアンティークジュエリーを随時100点以上揃えています。
シェルシュミディで取り扱うアンティークジュエリーは、全てオーナーが直接フランス、イギリスを主としたヨーロッパで買い付けてきたものです。