王族ご用達のオランダのローゼンダール工房
シェルシュミディとしては珍しいオランダのアンティークジュエリーのご紹介です。
親しいロンドンのディーラーさんから譲ってもらったジュエリー、色々調べていくと18-19世紀に良質なローズカットダイヤモンドジュエリーを作ることで知られていた、ローゼンダール(Rozendaal)工房製作のジュエリーであることが分りました。
オランダのアンティークジュエリーと言えばダイヤモンド、こちらもダイヤモンドが主役のジュエリーです。
ダッチローズカットと呼ばれるカット面が多いローズカット。
ローゼンダールの作品だけあってダイヤモンドの質が素晴らしく厚みもあり、鮮やかなシンチレーションが煌きます。
メインモチーフは直径1.5センチ程で、特にその中心に据えられた直径5ミリ程のダイヤモンドは大きさだけでなく厚みがあり、カット面のラインの正確さといい、ダッチローズカットの見本のようです。
メインダイヤモンドの周りを2周、円状にに小さなローズカットダイヤモンドが取り巻きます。
内側の円と外側の円にもダイナミックに高低差が付けられていて、ダイヤモンドの煌きが内側から外側に放射線状に拡がっていく様は、同年代のイギリスのジュエリーにもフランスのジュエリーにもない特別な美しさです。
裏側の美
ローゼンダール工房のジュエリーの特徴は特に裏面を見ると分りやすいです。
ダイヤモンドの裏側のセッティングも独特で、シルバーとゴールドの張り合わせもこれだけ曲線の多いパーツであるのにかかわらず完璧です。
メイン石の裏面には、「デイジー(マーガレット)」が描かれています。
「8の字」模様のパーツをつなげたようなブレスレットの作りは、一目で分かるような特徴的なものです。
手にすると程よい重厚感があります。
ゴージャスなダイヤモンドジュエリーでありながらブレス部分は細身になっており、現代女性が日常に取り入れやすいハイジュエリーです。
こちらのブレスレットは19世紀に製作されたものですがローゼンダール工房自体は今でも存続し、特にオランダやベルギーの王族に愛され続けています。
裏面はシルバー 裏がゴールド。
ゴールドは14金で、14金であることを示す「585」とオークの葉、またシルバーの刻印を縁どっている剣はいずれもオランダ製を示すものです。
工房印も入っています。
ブレスレットの長さは17.5センチ。
ブレスレットの長さの調節は、8の字模様のパーツを一つ取るといったことは可能ですが、左右同数のパーツが入っていますのでそのバランスを考える必要があります。
小さな写真をクリックすると大きな写真が切り替わります。
アンティークジュエリーと言えばイギリスやフランスのイメージが強いと思いますし実際にその2カ国で作られたジュエリーが多いのですが、意外に数としてもその次ぐらいに出てくるのがオランダあるいはアメリカ(20世紀初頭以降)のアンティークジュエリーです。
オランダのアンティークジュエリーの特徴は、短い期間で装飾様式が変化していかないこと。
イギリス特にフランスは19世紀の間に、10年単位でも様式の変化が如実に見られるのに対して、オランダのアンティークジュエリーは19世紀を通じてほとんど同じようなスタイルのジュエリーを作り続けています。
装飾様式としましては、イギリスのジョージアン後期のデザインと似ています。
オランダのアンティークジュエリーと言えば「ダイヤモンド」に尽きます。
オランダ、特にアムステルダムはダイヤモンドの加工地として昔から知られていますので当然のことです。
「ダッチローズカット(Holland cutting)」という言葉を耳にした事のある方も多いことでしょう。
ダッチローズカットにつきましては別のエピソードで図解していますのでご参照いただけましたら幸いですが、このアンティークローズカットを代表するカッティングはオランダが発祥の地です。
ローズカットダイヤモンド、ダッチローズカットのアンティークジュエリー
以降は、それ以外の国でも用いらるようになります。
ダッチローズカットはシングルローズカットより、山のように盛り上がり、厚みもあります。
「アムステルダムカット」とも呼ばれます。
オランダのアンティークジュエリーの特徴を、ご紹介していきましょう。
1)宝石について
宝石はなんと言ってもダイヤモンドが多いです。
そしてダイヤモンドはその多くがダッチローズカット、あるいはローズカットにされています。
2)地金特徴があり、銀製であることが多いです。
非常に大粒のダイヤモンドを用いているケースでも、ゴールドではなく銀でできていることが多いです。
これはペンダントでチェーンがついている場合も同様で、かなり粒の大きなダイヤモンドペンダントでも銀製のチェーンの場合が多いです。
下記は当店扱いの「ダッチローズカットのペンダントネックレス(オランダ、19世紀、銀製ゴールドバック)」。
大粒のダイヤモンドが用いられていますが、チェーン部分を含めて銀製です。
(ペンダントの裏のみゴールドバックになっています。)
ペンダントの裏面や指輪の裏面、あるいはブレスレットの裏面のみがゴールドにされているケースが多いです。
指輪の場合は、裏とシャンクはがゴールドで作られています。
そのゴールドは必ずイエローゴールドで、14金ゴールドがオランダのアンティークジュエリーのスタンダードになります。
14金ゴールドというのは基本的にイギリスのアンティークジュエリーでは存在せず(イギリスは基本的に時代によって9金か15金か18金です)、フランスのアンティークジュエリーでも珍しいです(フランス国内でも9金や14金が用いられたケースはありますが、18金がスタンダードの国です)。
ですのでヨーロッパ調のアンティークジュエリーで14金ゴールドのものを見つけたときに、一つの候補として考えられる国がオランダになります。
ちなみにオランダの14Kゴールドの刻印はオークの葉です。
3)セッティング
宝石のセッティングはクローズドセッティングであることが多いです。
クローズドセッティングでダイヤモンドの裏には、シルバーフォイルを敷き、裏面はゴールドで花の模様が金細工で彫られているというのがオランダのダイヤモンドジュエリーの特徴です。
4)デザイン
デザイン的にはゴールドとシルバーの重厚感のあるコンビネーションのジュエリーが多いです。
「繊細さ」ではなく、ダイナミックな重量感がポイント。
大粒のダイヤモンドをあしらったジュエリーでも、ダッチアンティークジュエリーはデニムなど普段着にあわせてもカジュアルに使えますので、そうした用途にはとても重宝していただけます。
またダッチアンティークジュエリーの、ターンオブザセンチュリー(19世紀末)の頃のジュエリーは特にフランスの影響を強く受けています。
1890-1910年代(いわゆるベルエポック時代)に作られたオランダのアンティークジュエリーは、ぱっと見たところフランスのジュエリーのように見えるものあります。
特に1900年頃になり、ダイヤモンドの周りを銀ではなくゴールドやプラチナを用いるようになってきますと、刻印以外では区別が難しいケースもあります。
下記は「ダッチローズカットダイヤモンドのフラワーリング(フランス?14金ゴールド)」。
装飾的には完全にフランスのアンティークジュエリーに見えますが、ダイヤモンドがダッチローズカットであるのと(フランスでもダッチローズカットは存在しますので一概には言えませんが)、フランスとしては珍しい(しかしなくはない)14金ゴールドでできていますので、私もこの指輪を譲ってくれたフランス人ディーラーも判断に迷いました。
(フランス人ディーラーさんが、フランスで仕入れた作品です)
オランダのジュエリーで全体をゴールドにしている作品は珍しいですので、フランス製の可能性の方が高そうですが…。
5)工房
オランダにはいくつかなの知れた工房があります。
刻印が入っていることもありますが、アンティークリングのシャンクやブレスレットのブレス部分がまるで家紋のように特徴があり、そのデザインによってどこの工房で作られたのか分かるケースもあります。
有名どころとしてはローゼンダール工房ROZENDAAL。
6代に渡って活躍した工房で、Hans Rozendaal(ハンス・ローゼンダール)がその創始者です(1625年)。
その後、Jan Rozendaalが工房をアムステルダムからホールンへ移し、1835年に「the Brothers Rozendaal company」を創業。
この時代に、ローゼンダールは最も美しいローズカットダイヤモンドのジュエリーを生み出します。
その後、Johan Rozendaal(ヨハン・ローゼンダール)が自身の工房を立ち上げ、一族のライバルになります。
下記は2011年にクリスティーズに出品された出品されたローゼンダールのローズカットダイヤモンドのネックレス。
ローゼンダール工房としては1925年以降と比較的新しい作品ですが、推定価格を大幅に上回る価格で落札されています。
アンティークエピソード集のページでは、様々なアンティークに関するエピソードをご覧いただけます。
アンティークリング、アンティークネックレス、アンティークピアス、アンティークブレスレット等、希少なヨーロッパのアンティークジュエリーを随時100点以上揃えています。
シェルシュミディで取り扱うアンティークジュエリーは、全てオーナーが直接フランス、イギリスを主としたヨーロッパで買い付けてきたものです。